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岩下敬輔氏インタビュー[最終回]

-お店には秋葉監督も来店されたということでしたが、以前から何かつながりがあったのでしょうか?

秋葉さんが山形や水戸の監督をやっていた頃に対戦したこともありましたし、エージェントとのつながりがあったりして…、とうのはありますね。でも、店に来た時にはあまりサッカーの話はしないですね。

-岩下さんから見た秋葉監督というのは、どのような人だと感じていますか?

懐が深いというか、いろいろなことを聞いてくれる人ですね。人の良い部分を引き出してあげようという作業を監督としてやっているのだろうなと思っています。僕は一緒にやっていないので本当のところはわからないですけど、そういう風に思わせる人ですね。一緒にいて喋っていてもストレスは感じないですし、見た目通りの熱い感じで来られたらアレでしたけど、そんなこともなく楽しい人ですよ。

-選手たちが来た時には、どんな話をされていますか?

いや、サッカーの話はほとんどしないですよ。僕から現役の選手に話すこともないですし、選手たちも言われたくないと思いますよ。

-でも、何かアドバイスを求めて来る選手がいるのではないですか?

それはありますけど、プレーのアドバイスというよりも振る舞いや向き合い方ということだけ僕は 話をしていますね。今のサッカーも分からないし、そのクラブごとに起こっていることがみんな違うので、僕が言うことが正解なのかもわからないので、「そういうこともやってみればいいでしょ」ということは言いますけどそれ以上は言わないです。僕が若かった頃とは時代も違いますし、今の選手たちとの価値観も違うので、「気にしないでやればいいのに」と思うこともありますけど、あまり強くは言わないようにしています。それでも求めてくる選手にはしっかりとアドバイスはしていますけど、そういう選手も今は少ないですから。「黙ってこれをやってみろ」というのを欲しがっている選手はほぼいないですね。

-飲食業の事業としては、今後どのような展望を持たれていますか?

あと2、3店舗くらいは出店したいですね。それである程度、会社として確立できてきたらまったく別のジャンルにも興味がありますし、例えば小学生、中学生、高校生が利用できるフットサルコートなども作ってみたいとは思っています。静岡はもう少しコートがあってもいいと思うのですけど、そこまでないのですよね。サッカー人口の割に少ないかなと思っていますから。

-ちなみに次の店舗としては和食、中華、洋食などどのようなジャンルのお店でしょうか?

僕はこの町にないジャンルを入れたいと思っていますから、まだコレというものはないのですよ。
町を見て、「これが足りていないからやろう」という感じなので…。そこまで本格的な店というよりは気軽に立ち寄れる店の方がいいと思っていますから。ただ素材には拘っていますから、もつ鍋も一度食べてもらえばわかってもらえると思いますけど、なるべく良い物を安く仕入れる努力と下処理はしっかりとしていますので、味には自信がありますよ。

-クラブでは高木純平さんと兵働昭弘さんが強化部副部長、西部洋平さんが広報と、一緒にプレーした選手が現場ではなくてフロントとしてクラブで活躍していますが、そのことはどう感じられていますか?

僕はそうなるべきだと思っています。選手だった人が半分くらい在籍するクラブの方が絶対に良くなるはずなのですよ。やっぱり、選手の気持ちというか、「これをやってほしい」とか「こうすれば気持ちが乗ってくる」という両方を知っている人がやった方がうまくやれるはずですし、あとはそのクラブに対しての愛着がある人が戻っているはずなので、そういう人の声ややり方というのは選手たちにも受け入れられやすいですし、そういう考えを取り入れて行くべきだし、他のクラブもどんどん元選手だった人をクラブに引き入れているので…。それがフロントなのか現場なのかは関係なく、そういう人がどちらにも増えればフロントと現場のコミュニケーションも取れると思うし、それは良いことだと思いますね。

-では岩下さんも、エスパルスから「手伝ってほしい」と要請があれば?

そうですね。もうちょっと余裕が出ればやらせてもらいたいと思うし、クラブの力になれるのであれば、静岡で過ごす時間も長くなっていますから、ガッツリは無理かもしれないですけど、できることはあると思いますし、何か手伝えることがあればやらせてもらいますよ。

-もし岩下さんがクラブへ入ったとしたらまず、何をやりたいと思っていますか?

やっぱりまずは、今の選手たちが何をどう思っているのかを聞いて理解したいですね。あとは、エスパルスというクラブのポテンシャルを考えればファンやサポーターはもっといると思っているのですけど、スタジアムに来ていないですよね。そこは凄くもったいないなと思っていて、そちらの集客とか広報とかをやりたいですね。もっと選手をアピールすることができるのではないかと思っています。カテゴリーが当時とは違いますけど、僕らがいた頃は1万7、8千人が当たり前に入っていたクラブだったので、そのポテンシャルはまだあると思っていて、「J2だから」ではないと思いますし、国立競技場でやればあれだけの人が集まってくれるわけですから、アイスタでももっと集客して盛り上げたいですね。そうすれば選手たちは勝手に本気になりますよ。

-やっぱり満員のオレンジで埋まったスタジアムでなら、自然とプレーに現れるということですか?

もちろんですよ。選手が入場する時はスタンドを見ていますから「今日は少ないな」ではモチベーションにはならないですよ。あと別にオレンジでなくてもいいと思いますよ。僕なんかは浦和レッズのあの真っ赤なスタジアムや磐田のブルーのスタンドを見た方が気持ちは入りましたからね。逆にガンバの時にエスパルスのオレンジに興奮していましたから。多分それは、他の選手も同じだと思います。満員の
スタジアムでプレーすることが一番の幸せですから…。もちろん味方の色が多い方が心強いですけど、味方、敵に関係はないですし、試合に出ていない選手も、プレーに湧く満員のスタジアムでプレーできない悔しさというものも出て来ると思いますから、そういう雰囲気をサポーターには作ってほしいですね。

-国立競技場で超満員の高校選手権決勝を戦い、ガンバ大阪でも満員のスタジアムでプレーした岩下さんでも、やっぱりそういう雰囲気でプレーするのは羨ましいですか?

羨ましいですし、スペインまで行ってカンプ・ノウでバルセロナ対レアルマドリードの試合を観た時には、「これだけの観客を魅了できるサッカー選手というのは凄い」というのを実感しましたし、そのピッチに立てる選手は本当に凄いと思えたので…。でも、それがサッカーだけではなくて他のスポーツでもそうだと思うし、そういうところでやれる選手は自然とモチベーションも高くなるし、そのプレーを観て感動できるのがスポーツだと思うので、そういう空間をファン、サポーターが提供してあげることで、選手たちも持っている力以上のものを発揮してくれるはずなので、是非、アイスタを満員にしてエスパルスの選手たちを奮起させてほしいですね。

-今は電子チケットやアプリ、SNSなど、時代に合わせた方法でクラブは運営をしていて新規サポーターの獲得には成功していますが、逆にこれまで応援してくれていた年齢が高いサポーターに対しては、少し応援しにくい環境となってしまっているのが現状です。仕方がないことかもしれないですが、そういったことについてはどう思われますか?

そこはもう時代がそういうことになっているので仕方がないかなとは思いますけど、それならば昔から応援してくれている人に対してはもっと何か特典をつけてあげるとか…。例えばちょっと大袈裟かもしれないですけど、そういう人にはチケットを半額してあげるとか、どうせ満員にはなっていないのだから激安シートみたいなものを用意して販売するとか…。多くの人たちは多分シーズンシートを持っているだろうから、本人ではなくて家族や親せき、友だちなどを年に1度招待できるような席を作ったりするとか。あと年配者で長くサポーターでいてくれた人には、シニア価格にするとか。応援はボケ防止にも役立つと思うし、孫と一緒にスタジアムにくればいいんじゃないですかね。確かに若い新規のサポーターの方がこの先長く応援してくれるでしょうけど、お年寄りのことも考えないといけないと思うし、赤ちゃんからお爺ちゃん、お婆ちゃんまでにも愛されるクラブでいてほしいですね。

-岩下さん個人としての今後の目標というのは?

今年で38歳なのであと7年くらい、45歳くらいまではいろいろな現場に立って頑張りたいです。それでその後はどこかの島にでも渡ってのんびりと暮らしたいですね。でも、何か僕に協力ができることがあるなら何歳になっても今までの恩返しという意味でも手伝いはしたいとも思っています。

-最後に、エスパルスのサポーターに向けてメッセージをお願いします。

今はクラブも大変な時だと思いますけど、ファン、サポーターとクラブが思っていることは一緒だと思います。選手たちもみんなが思っている以上に、J1に昇格して自分のサッカー人生をやっぱりトップのレベルのカテゴリーで表現したいと絶対に思っています。ですから、この今の状況を変えるためにはファン、サポーターの人たちがもっともっと応援してあげて、いろいろな声を選手、クラブへ届けてほしいと思います。ようやくエスパルスも良い方向へ向かい出していると思いますし、それを信じて応援してあげることだけかなと思います。エスパルスファンの僕としてもできることはいっぱいあると思うので、それはそれとしてやれることをやってシーズンが終わった時にみんなで「良かったね」と喜び合いたいですね。あとはこれからも店に来てエスパルスの話題で盛り上がってもらって、ストレスを発散してもらえればと思います。

-今日は貴重なお話ありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

 

 

プロフィール

1986年生まれ
鹿児島県伊集院町(現日置市) 出身
鹿児島実業高等学校3年在学時に主将として全国高校サッカー選手権大会で優勝し、2005年に清水エスパルスに入団。長谷川健太監督の下、2009年から主力として活躍し、同年には日本代表にも選出された。2012年にガンバ大阪へ移籍し、2014年にはガンバ大阪の3冠タイトル獲得に貢献。その後はアビスパ福岡、サガン鳥栖へ移籍したが怪我の影響もあり2020年をもって現役を引退。現在は静岡市内に「もつ居酒屋 美臣」と「うどんと酒 めん輔」の飲食店を経営し、地元鹿児島の高校生への指導も行っている。