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平岡康裕氏インタビュー[vol.1]

インタビュー:2024年8月


-練習の合間の忙しいところありがとうございます。本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

-引退されて岳南Fモスペリオのコーチに就任されてから半年が経ちましたが初の指導者としての挑戦はいかがですか?

難しいことが多いですね。やはり「伝えることの難しさ」ということは実感しています。

-具体的にはどういう部分が一番難しいと感じていますか?

自分がプロ選手としてやってきたゆえに自分としては当たり前と思っていることがありますが、今のチームはプロではないですし、このカテゴリの選手とはこれまであまり交わることもなかったので、自分が当たり前と思って口に出したことも、彼らにとっては当たり前ではなかったということに気付くことが多いです。

-同じサッカーなので基本的にはカテゴリが違っても同じ内容ではないかと思いますが、理解力が少し違うということでしょうか?

もちろん個人差というものはそれなりにあるのですが…。逆にサッカーに対して純粋ですから僕の言うことを素直に受け取ってくれる選手が多いですね。

-そうすると指導者としての楽しさというのを実感できていると?

そうですね。僕が言ったことがすぐにプレーに反映されたりすると「分かってくれていた」という手応えを感じたりします。それが積み重なって試合で生かされて勝利できるとやっぱり嬉しいですね。

-プレイヤーから指導者という立場に変わり、ギャップみたいなものは感じますか?

“自分ならこういうプレーをしているだろうな”という頭での理解力とそれを選手たちに伝える理解力、選手たちにどう分かるように伝えればいいかという意味での理解力ということで自分自身にギャップは感じています。

-平岡さんはJ1でも活躍されたトッププレイヤーということで、レベル差を感じているということですか?

と言うか、求め過ぎてもいけないなというのはありますね。先日監督に就任したアカ(赤星貴文)とも話をしているのですが、アカも僕と同じプロ選手としての経験がありますので、「求め過ぎるのも良くないよね」ということはお互いに感じているところです。

-でもついつい求め過ぎてしまうこともあると?

そうですね。ただ、その要求することというか、求めることもすべてを求めるのではなくて要所を自分たちでかみ砕きながら求めないと相手はパンクしてしまうかなという話もしています。

-コーチを始めてから半年以上が経ちましたが、選手たちのスキルが上がった手応えはありますか?

始めの頃に比べれば多少は上がっているのかなという…。ただ、僕自身がまだそこまでやれているわけではないのでね。それでもディフェンスの部分で求められていることは自分の経験したことも含めて伝えてはいますけど、まだまだ伝えきれていないことの方が多いですね。

-今は監督とコーチが2人ということで、清水や仙台のようにコーチがたくさんいる状況ではないので、やらなければいけないことも多いのかなと思いますが?

そうですね。でもそこまでではなくて、今は練習内容と意図を選手たちにちゃんと伝えることを意識していますし、 スクールも立ち上がりましたので、そこの子供たちへのアプローチ、サッカーの楽しさを伝えるということもやっていますから、まずは富士、富士宮から広げて行ければと思っています。

-引退するにあたって、第二の人生に『指導者』の道を選んだ理由を教えて下さい?

引退を決めた時は漠然としていて「何をこれからやろうか」と思っていましたし、ファーストチョイスに『指導者』ということでもなかったのですが…。色々な人と話をする中で、もちろんエスパルスからもアカデミーでの仕事の話もいただきました。その中で、僕の後援会の会長さんと赤星と現名誉会長の佐野勇樹さんと食事をすることになって、「富士、富士宮を盛り上げてほしい」という話をいただきました。やるからには中途半端にはできませんから、しっかりと指導者の道を歩んで行こうと決めました。

-現役時代は指導者ということはあまり意識していなかったのですか?

どちらかと言えば内部に入ってみたかったですね。フロントで仕事をしてみたいというイメージは自分の中では現場でやるということよりも強かったですね。スカウトとか強化部とか、そっちの方をやってみたいというのは現役の時には思っていました。

-そうすると地元愛でコーチを引き受けた感じですか?

そうですね。アカが富士で僕が富士宮ということで、セカンドキャリアをスタートさせる上で僕がこのチームに携わることでチームやクラブにプラスになることがあるのであればやってみたいと思いました。今まではずっと清水、静岡でしたので、本当の意味での地元に恩返しをするタイミングがなかったので、「そのタイミングが来たんじゃないの」ということをアカが話してくれて、自分としても良いタイミングだと思って引き受けさせてもらいました。

-赤星さんの存在も岳南Fモスペリオに決めた理由として大きかったですか?

それは間違いないですね。アカとは県選抜でも一緒にやっていますし、アカの存在がここに来た一番の要因と言えますね。

-その赤星監督はどのような監督ですか?

熱いですね。頭も良いですし、選手のことをいろいろと考えてやろうとしていますし…。ただ、監督になったのが最近ですからまだ落とし込みができていることが少ないので、僕としてはアカをうまくサポートできればと思っています。アカも昨年までここで選手兼スタッフとしてやっていて、僕と同じであまり指導者ということは意識していなかったようですけどね。

-エスパルスからはアカデミーでの話があったということでしたが、やはりやるからにはもう少し上のカテゴリでやってみたいということでしたか?

そうですね。指導者の入り方としてはアカデミーの子供たちを指導するというよりは、やはり自分としてはここまで厳しい勝負の世界でやって来ましたから、「勝負にこだわる」ところでの指導をやってみたいなという気持ちが強かったですね。もちろん子供たちの成長を見届けることも面白いことだと思いますが、やはりあの緊張感の中で勝負にこだわる世界というのは魅力的ですから。

-指導者のライセンスというものは?

いえ、現役の時はライセンス講習には行っていませんから、今年からC級ライセンスを取りに行きます。

-岳南Fモスペリオにはプロ契約選手はいない?全員がアマチュア選手なのですか?

そうです。みんな働きながら練習して試合に臨んでいます。基本的には午前中に練習をやって午後から各企業で仕事をしています。スポンサー企業様にお世話になっていますから、仕事もサッカーもしっかりとやっています。スポンサー企業様ということである程度融通を利かせてもらっていますから、選手たちは恵まれているといえばそうかもしれません。ただ、プロなら試合後はオフで体もメンタルも休めることができますし、リカバリーをする時間がありますけど、彼らは試合が日曜日なので翌日の月曜日には仕事がある選手もいますし、特にアウェーから夜に戻ってということで休む間もなく仕事に行く選手もいます。

-もちろん選手たちはプロを目標にプレーしているのですよね?

そうですね。そのためにステップアップをしようとしている選手しかいないと思います。クラブもより上のカテゴリに行けるように応援しています。もちろん、今はJFLの1つ下のカテゴリの「J5」に所属していますが、われわれのクラブが早く昇格し、Jリーグに参戦してここで活躍してくれるのが一番で、また選手たちにはそれ以上のスピードで成長してもらいたいとも思っています。そういう意識を持った選手が多くいることでクラブも成長して行けると思っています。

-そうすると現在の東海社会人サッカーリーグ1部で優勝すれば次のJFLへ昇格できるわけですか?

そこから全国8つの地域ブロックがあって、そこで優勝したチームで「地域チャンピオンズリーグ」が開催され、そこを勝ち抜いた1チームが自動昇格できるというハードルがかなり高くて、なかなか狭き門を勝ち上がらないとJFLには昇格できないのですよ。

続く