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平松康平氏インタビュー[vol.2]

-そんなユース時代の思い出というものは?

やはり、ユース時代でもトップチームとの絡みですかね。高校2年生からトップチームに帯同していましたし、トップの練習も僕らを待ってから開始していましたから。そういう意味では、やはり常にわくわくして練習をやれていました。

-ユース選手が、澤登正朗選手(現清水エスパルス ユース監督)や長谷川健太選手(現名古屋グランパス監督)などのトップの選手と一緒に練習をしてみた感想というのは?

自分の方が上手いと思った、絶対に。ただ、上手さだけでは通用しないというのも実感しましたね。本当に強いフィジカルとか…。僕が初めて参加した時には、ディフェンダーのロナウド(元ブラジル代表)がいたのですが、ワールドカップの優勝メンバーだったドでかい選手が、小さくて華奢な自分といきなり対峙するのですよ。無理でしょ、普通は。でも、めちゃくちゃ楽しかったですね。だから本当にワクワクした毎日でした。それでもやっぱり、自分が通用すると思っていたことが通用しなかったことはショックでしたね。

-何が通用しなかったのですか?

「ここで抜ける」と思っても、やはり抜け切れなかったです。サンちゃん(三都主アレサンドロ)なんかも上手く足伸ばしてくるし、足の長さも違うし、やはりプロじゃなきゃ分からないボールを取る感覚というものは、自分にとっては衝撃でしたね。例えば、高校選手権で優勝したチームとユースが対戦することがあっても、やはりうちは負けないわけですよ。でもそれを持ってしても通用しないというプロは、やはりレベルが違うという感じ。それは初めての経験でした。

-今の話を聞くと、やはり早めにトップチームのレベルの高いところで経験した方が成長も早くなると?

その方が、絶対に良いと思います。個々にはいろいろと良い選手は出てくると思うのですよ。だから、その個々をチームとして大事に育てるかどうかというのが、やはりすごく重要になると思っています。自分がエスパルスでやらせてもらっていた時には、現場では選手を守ろうとしてくれる人たちとカリスマ性がある人たちがいましたよね。会社も一体となって強くなろうというのがすごく実感できていましたよ、当時は。だから「ここでやるんだ」という思いがすごく強かったです。「ここで成功したい」というのは、選手みんなが思っていたと思いますし、そういうチーム、クラブでした。

-ちなみに今は、忙しいということもあるかもしれませんが、エスパルスの試合はあまり観ていないですか?

はい、本当に観ている暇がないです。

-でも、エスパルスに対しての興味がなくなったわけではないのですよね?

いや、もちろん興味ありますよ。ただ、知り合いが監督やコーチやっていないから…。今はイチがコーチ、ノボリさん(澤登正朗)がユースの監督をやっていますけど…。ケンタさん(長谷川健太 現名古屋グランパス監督)も監督という立場で一緒にやらせてもらいましたけど、当時は僕も現役選手でまだ尖っていましたからぶつかったこともありました。でももちろんスペクトはずっとあるわけですよ。今はサッカー界から少し離れた立場にいる人間からしてみると、そういうケンタさんやカツミさん(大榎克己)は少し監督をやっていましたけど…。まあ賛否はあるようですけど、やはり当時一緒に戦った仲間が現場に絡んで、本当に思いがある人たちがやっているのを見たいなとは思っています。今もみんな思いがある風なことを言うけれど、どれだけ真剣にエスパルスのことを、本当に苦労してここのために身を削ってできる人、やはり仕事やお金だけじゃなくて、「清水エスパルスのために」という人にやってもらいたいなと思います。

-何かそういうことを、今はすごく感じますか?

感じますね。外から見ていると余計に…。何か「清水エスパルスらしさ」が失われているというか、じゃあ「エスパルスらしさとは?」と言われても困るけど、特にここ何年間は何か違うような感じがしています。

-ここ何年間といえば、トップに上がったユース選手が活躍できていないことについてはどう思いますか?

どこのレベルで「活躍した」なのか…。というものあると思います。まあイチはフル代表まで行っているのでアレですけど、では僕が活躍したかといえば、もっと上を目指していたわけであって、真面目に取り組んでいればよかったのかなとは思いますけど。だからどこのレベルで活躍していたのかというのはあると思いますが、それでも地域の人が応援してくれるという部分はまだ根強く残っていると思うのですよね。だから選手もそれに対して応えなきゃいけないし、そういう状況をやっぱりクラブが作らなければいけないのかなというのはありますね。

-トップチームに定着、レギュラーとして活躍ができていない現実があって、クラブが育てることができないのか、ユース選手自体のレベルがそこまでないのかというのはどうですか?

だからバランスじゃないですかね。人事的なバランスもあると思いますよ。監督とコーチもあるし、あとは会社もあるし、それをどうやってメイクして1つのチームにしていくかという力が、クラブのトップには必要だし…。それは自分が今、会社を経営していていろいろな人がいる中で、その立場になって思うことですね。もちろんJリーグという大きな組織の中で、大きな力を持ったスポンサーがいるクラブと比べられないかもしれないけど、僕みたいな人間が11人揃ってもしょうがないですし、例えばすごいスーパースターが1人いてあとは駄目だったというのでも仕方ないし、やっぱりあとは監督とかGMとかいろいろな取り巻く環境を整備していかないと、チームもユース出身者の選手も結果は残せないかなとは思います。

-そうすると、なかなか今のエスパルス自体に結果が伴っていない原因は、そういうところもあるのではないかということですか?

そこが一番だという風に思いますね。選手は悪くないと思います。選手たちにどういう風な思いをさせるのか。どういう気持ちでプレーしてもらうか。そのマネジメントの部分での環境を本当に整えているかどうか、というのはやっぱりクラブのトップの手腕次第だと思いますね。

-今、メンバーを見ると静岡出身者がほぼいない状況なのですが、そのことについてはどう思いますか?

寂しいですよね。多分これを言うと「理想だよ」と言われてしまうかもしれないけれど、それは理想とかではなくてそれこそ一番簡単なことなのですよ、本当はね。やはりそこには「人」というキーワードがあって、選手もファンも地域も「人」なのですよ。この清水にはものすごい資源がいっぱいあるわけで、その資源をどう有効に使って盛り上げて行くのか。またそれでお金を生んで行けるのかというのも、やはり経営のやり方というか、それを生かせるかどうかだと思いますよ。

-そういう意味では、立て直しを手伝ってくれるOBもたくさんいると思いますが?

そうですね。逆にOBは、クラブ側からしてみると力が強すぎるのではないかな。1人親方の集まりだから。「文句」という厳しい意見を言ってしまいそうだけど、ただほとんどがサッカー界に席を置いているので、なかなか意見できない現状もあるし、「エスパルスと関わるのは面倒」と思っている人も実際はいるのでね。「言ったところで変わらないのだな」というような状況を作ってしまった現実もありますからね。

-J1で残留争いをし続けても、J2に降格しても、J1に昇格できずにJ2に残留してしまっても、根本的かつ重要な部分は何も変わらずに新シーズンに突入してしまい、クラブはもちろん、サポーターやスポンサーも、もっと真剣に何がダメなのかを考えないといけない時期に来ていると思うのですが?

もうずっと来ていますね。もう何年も…。サポーターやファンは仕方ないところもあるし、言い方はどうかと思うけれど、上手くごまかされてしまっているかなと。でも、それでもお金を払って観に来てくれている人や、お金を出してくれているスポンサーには、その目の前のところだけではなくて本当に見えないところまで感謝するようなクラブ運営をしていかないと、もうごまかしているところがバレ始めていると思いますよ、分かる人たちには。

-その他に、何か心配していることはありますか?

「エスパルス」というブランドがなくなってしまうことですかね。昔と同じやり方でやっても絶対にダメだし、それは時代の流れに乗ってやらなければいけないですけど、やはり先代がやってきたことを継承してやっていくことが本当のブランドだと思うのです。でも「昔が良かったから昔のことをそのままやればいいんでしょ」というのも違うのですよね。残さなければいけないことは残しつつ、その時代に合った進化をしていかなければいけないのではないですかね。

-ユースから昇格してプロになったわけですが、実際にプロ選手になって感じたこととは?

 「プロはいいな」と思いました。好きなことがやれてそれでお金も稼げるでしょ。あとはやはり、本当に地域の人が応援してくれて盛り上がっているのを見ると、町おこしにも貢献しているのかなという嬉しさがありましたし、そこは結構感じていましたね。

-でもアイスタは客席がピッチから近いので、声援もあったけどヤジも聞こえていたのでは?

ずっと聞こえていましたね。でも僕にはあんまり言われなかったかな…。言い返すから。

-「声援が力になります」と選手は言いますけど、本音のところはどうなのですか?

いや、本当に力になりましたよ。なるなる。もうそれが一番です。本当に綺麗事ではなくて、さっき話した町おこしにも繋がるのですが、そういうところで、自分が生まれて育ったところが活性化していくということを実感できるということ、だから地元の人が活躍するような環境を作るべきだと思うし、お互いこんな嬉しいことはないと思いますけどね。

-昔の選手たちは、そういう考えが多かったのですか?

いや本当そう思いますよね。だから「駄目だったら移籍すればいい」という考えはみんなにもなかったと思っていたし、「もうここ(エスパルス)でやるんだ」と。自分より先輩でも、エスパルスと心中しようと思っていた人が昔はたくさんいたと思うけど…。

 

続く