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柴原誠氏インタビュー[vol.3]

-現役を引退する決断と、その後に指導者を目指すということは、上手く受け入れられたのですか?

僕は結構あっさりでしたね。最後は福島ユナイテッドFCで満了になりましたけど、チームの変革期で年俸の高い上から5人くらいが契約満了となって、その中に僕もいて…。それでトライアウトに出て、アスルクラロ沼津や藤枝MYFC、他のJ3のチームから一応は声をかけてもらっていたのですけど、エスパルスでJ1を経験して、FC岐阜でJ2を経験して、福島でJ3を経験した中で、「どうここからJ1に返り咲くか」というのが見えなかったですね。今、J3、J2で頑張っている選手は上を目指すということでいいと思いますけど、僕は上から下へ落ちて行った選手だったので、現状を知っていたこともあり無理かなというのを感じてしまっていました。そうすると「すぐに次のセカンドキャリアへ進まなければ、このままプロ生活を続けていても無駄な人生を送るな」と自分自身は思ったので、トライアウトが終わってすぐにエスパルスへ「コーチをやらせて下さい」と連絡をしました。親にもその日のうちに、「現役はもうやめる」と伝えて切り替えました。

-セカンドキャリアについては、サッカーとは別のことをやろうということは考えなかったのですか?

それは全くなかったですね。なんだかんだプロとしてエスパルスでやった2年半は楽しくなかったですけど、岐阜と福島では試合にも出してもらって充実していました。チームの大事な試合とかで貢献もできているという実感もありましたし、そういう日々が送れていたので楽しくやれていましたし、あらためてサッカーが好きになりました。もしかしたらエスパルスにあのままずっと在籍してエスパルスで引退していたらサッカーは続けていなかったかもしれないですね。岐阜と福島で「サッカーはやっぱり楽しいな」ということをまた思い出せて、「次もサッカーの仕事がしたい」という感じでした。

-それで引退後は、スクールのコーチとしてエスパルスに戻ったのですが、子供たちに何か教えるという立場になったときの想いというものはどうでしたか?

そうですね。ちょっと申し訳ないのですけど、自分のステップアップだと思ってやらせてもらいました。

-それはもう最初からステップアップだと考えて?

はい。最初からそう思っていました。今のような未来は描いてはいなかったのですが、結局今までやってきたことと同じで、どう自分が更に上へ行くのかとか、自分がどう今の枠の中でレベルアップし続けられるかということを考えていたので…。もちろん僕がステップアップすれば、目の前の子供たちもやっぱり上手くなるという、お互いにウィンウィンな関係になれると思っていたので、子供たちに必死にサッカーを教えましたし、指導の勉強もしましたけど、すべては自分のステップアップ、レベルアップのために毎日を過ごした結果、結構なスピードで成長ができました。

様々な指導実践にも、自分から積極的に参加しました。実は指導実践というのは緊張しますし、評価されますし、失敗をしたりして他のみんなは嫌がるのですよ。でも僕はそのみんなが嫌がるところに自分からどんどん行きました。それまでにキャリアを積んだ指導者が40人ぐらいいたのですが、そういう人たちを抜いて多分3本の指に入るぐらいのコーチのポジションには、1年でなってしまいました。

そこからは他の人の指導に対して意見をしたりして、指導者としての実感を掴んできたときに、キューズFC静岡という別のところに、エスパルスからの派遣という形で配属され、そこで小学生のチームを見ることになりました。そこでチームとしての動かし方だったり、1年のサイクルだったり、長いスパンで子供を育てるというチームの運営とか、そのスケジューリングなどを3年間学ばせてもらって、それが今のFCガウーショを立ち上げるためのキッカケになった感じです。もう、すべて自分のステップアップのために日々を過ごしていました。

-そのFCガウーショは創設して3年経ったということで、苦労したことや難しさというものは何か感じていますか?

今、3年でこれだけのタイトルを獲得して突っ走って来たのですけど、今の課題はこの現状を維持させるということ。維持する難しさということです。今の強さだったり、選手の人数だったりを維持する難しさ。あとはこれだけ突き進んでくると、なかなかもう次のステップっていうのが見えにくくなっているので、「次の目標をどこに設定して、停滞しないように次のステージに向かうか」という、明確な目標を立てる難しさを今は感じています。

維持するということは停滞するということになってしまうのですが、維持もしないといけないと思っています。何か矛盾していることは自分でも分かっているのですが、「維持しながら次のステージに進む」という考えと今戦っている感じで…。今、自分が何をやらなければいけないのかというところが少し明確ではないですね。その中でコーチも増えて、会社の従業員も増えて来ているので、そういう人たちを「守っていかないといけないと考えると、やはり結果を出し続けて、選手を増やして、維持して、ということになるのですが、だけど維持しているだけじゃなくて、もっと前進しながらしっかり従業員たちが困らないように、いろんなことを大きくしていかないといけないということは考えています。

-当初、柴原さんがサッカースクールを始めると聞いたときには、乱立というか、様々なクラブが存在しているなかで、少子化という問題もあってなかなか大変ではないのかなと思ったりしたのですが、その辺は今現状的にはどうなのでしょうか?

そうですね。立ち上げた最初は静岡県とか静岡市の存在しているクラブから総叩きだったのですよ。
やはり掲げている内容やブランディングの仕方とかSNSの使い方とかも激しかったので、すごく叩かれました。「黒船来航」みたいな感じで言われたので。だけど、いざこうして馴染んでやっていると、僕らが取り扱っている選手層というのはトップのところなのですね。スクールとか他のチームというのは僕らのトップ層の1つ下の層を取り扱っているので、実際には競合はしてないのです。それでもその1つ下の層のトップの選手がウチに興味を示したりするので、1人、2人はもしかしたらスクールをやめたりしてというのはありますけど、基本的な層はかぶっていません。

ただ、良く思っていない人はいるみたいですけど…。静岡市だとウチが圧倒的に強くなってしまっていて、県大会とかでも静岡市の他のチームは1回戦か2回戦ぐらいで敗退してしまうなかでウチは優勝しているのですね。ちょっと飛び抜けているので…。あと今までにないことといえば、市内のリーグ戦などには出場しない宣言をして…。

-それはルール上、問題ないのですか?

大丈夫です。市内には「青葉リーグ」というのがあって、今まではそれに出場するのが当たり前という文化だったのですが、僕は自分の知り合いとかにお願いして県外にも行きますし、試合も1日使って行ったりしています。でも静岡市のリーグ戦に出てしまうと、半日、もしくは1日を拘束されてしまうのですね。そうすると僕のやりたいことができなくなってしまいますし、そこにスタッフや選手も張りつけになってしまうので、「うちは出ません」ということを最初に言ったのです。そうしたらいろいろな人からすごく怒られました。でもなぜか、暗黙の了解みたいなルールが蔓延っていて、実はみんなも出たくないのに出ているのですよ。「長いものには巻かれろ」ではないですけど、チームよりもそういうことを大事にするとか、子供たちのことよりも、そういう大人の事情を大事にしていると。もちろんそれも分かります。でも新規参入だからこそ、そういうしがらみにとらわれずに子供たちのためにやりたいことやります、ということで県外の招待試合とかに出場したりして時間を使っています。

最初はめちゃくちゃ怒られたのですけど、ただ僕たちは協会のイベントとか出られるものについて、他のチームよりも積極的に協力をしていますし、何よりも結果出していますから…。ちょっと別の角度から上手く関わりながら協力していくうちに、そういうところが認められ始めて、今は静岡市の協会には理解していただいて上手く付き合えていると思っています。ですから横穴を開けたというか、今までのことが当たり前だったかもしれないけど、「そこはちょっと違うのでは」という風を吹かしたと思っています。今までのことは今までのことですけど、まずは子供たちのことを一番に考えるとそういう行動になりましたし、でもそれは新規だからできることだと思います。長年そのルールの中にいた人たちがいきなりそういうことはできないと思いますし、僕だったからっていうのもあるかもしれないです。みんな「あいつはそういうことやるよ」みたいな感じで異端児扱いされていますから。でもそれは逆にありがたくて、これからまた新しいことをやっても、「柴原のところならやるな」という感じになっていますから。

-そうすると、今は小学校1年生から6年生までが対象でやっていると?

そうですね。あとその下の、いわゆるスクールの子供たちも見ています。練習は週5回で静岡市羽鳥の方でやっていますが、西は湖西市、東は富士、富士宮市から来ています。あと山梨からも3人が来ています。山梨からも親御さんが中部横断自動車道を使って送り迎えをしてくれています。

-スクールについては、ベルテックスさんも関わっているようですが?

はい。沼津スクールと焼津スクール、それと静岡でキッズをやっていまして、沼津スクールはベルテックスにも関わってもらっています。ベルテックスと学童がコラボして、試合に招待してもらったり僕らもベルテックスの試合を観に行ったりしていますので、スクール事業で提携して一緒にやっている感じです。

 

続く